第432章 できれば焼き鳥を

客が次々と乗船するにつれ、クルーズ船の人が一気に増えた。

夏目芽依は羽柴明彦の手を離し、「ちょっとトイレに行ってくる」と言って角を曲がると、すぐに横に行って食べ物を探し始めた。

「なんだか訳の分からない誕生日パーティー、食べ物一つ出し惜しみするなんて…」と彼女は小声で呟きながら、あたりを歩き回って見回した。

元々いたクルーズ船のメインホールでは、ドリンクを持ったウェイターが行き交っていたが、軽食を持ったスタッフは一人も見かけなかった。他のパーティーでは多かれ少なかれ、手軽に食べられる上品なスナックが用意されているものだが、ここではお客に空腹のままお酒を飲ませるだけだった。

レストランは2階にあり、まだ開放されておらず、シェフたちはディナーの料理を準備中で、全ての客が乗船した後に提供が始まる予定だった。