広々としたデッキの上で、夏目芽依は最後の一切れの鶏肉を口に入れ、じっくりと味わってから、親指を立てた。「本当に美味しく焼けてる。この鶏の死を無駄にしなかったわ」彼女は立ち上がり、深く息を吐いた。「今はずっと楽になったわ」
この時間、招待客たちは全員パーティーホールに集まり、互いに会話を交わしながら、宴会の正式な開始を待っていた。誰もデッキには来ないだろう。だからこそ、彼らはここに逃げ出して食事をしていたのだ。
中村景吾は彼女から空の皿を受け取った。「もっと要る?」
夏目芽依は頭を振った。「もういいわ。今日のドレスはきつすぎるから、これ以上食べたら裂けちゃうかもしれない。それじゃあ恥ずかしいもの」彼女は笑った。
もし羽柴明彦が今日このようなぴったりとしたドレスを選ばなかったら、もう半分の鶏肉を食べても問題なかっただろう。