第451章 途中で逃げ出す

西洋料理店にて。

羽柴明彦は皿の魚を一切れ切り分け、夏目芽依の皿に置いた。

「私の魚を食べてみて、とても新鮮だよ」彼の口調はいつもの厳しさや冷たさが消え、なんと優しささえ帯びていた。夏目芽依はしばらく慣れることができなかった。

彼女は向かいに座っている橋本晓美を見上げると、彼女が黙って自分の皿の料理を真剣に切っているのに気づいた。表情は特になかった。

修羅場だわ、と彼女は心の中でため息をついた。

羽柴明彦を見ると、とても自然な様子で、こちらを見つめていた。「どうした？気に入らない？」

「うっ…」この柔らかい言葉を聞いて、夏目芽依は思わず身震いした。以前は彼の態度が冷たいことを不満に思っていたのに、今はよくなったと思えば、過去を懐かしむようになった。もしかして自分はマゾなのだろうか…