第452章 契約書にサインしなければ

「あぁ、わざわざ私を探しに来なくていいよ、橋本さんとゆっくり食事を…」言葉が終わる前に、電話は切れてしまった。「なんなのよ…」夏目芽依は眉をひそめた。どうやらこの人はまた本性に戻ったようだ。自分の言いたいことだけ言って、相手のことなど全く気にしない。どうやら彼は長く演じることすらできないようだ。

夏目芽依は真剣に考えた。あのジュエリーセットの誤解はまだ完全に解けていない。もし羽柴明彦の言うことを聞かなければ、万が一彼が家まで追いかけてきて、母親に自分が高橋山雄からお金を借りたことを知られたら、それこそ元も子もない。それなら先に解決してから帰った方がいい。結局、彼はそういうことを本当にやりかねない人だから。

そう考えると、夏目芽依は決然と立ち上がり、次の駅で電車を降りた。