第442章 物を失くした

橋本晓美が慈善オークションの会場前に現れた。車から降りるとすぐに、入り口で待ち構えていた記者たちに囲まれた。

「橋本さん、あなたと羽柴明彦さんが公然と不倫関係を持ち、誕生日パーティーの会場で愛を示し合ったというのは本当ですか?」

彼女は記者たちを無視し、前に進み続けた。

「どうぞ道を開けてください」運転手もこの時車から降り、彼女の側を守った。

「羽柴夫人に対して公平だとは思いませんか?」

群衆の中からそのような声を敏感に捉え、橋本晓美は足を止め、振り返った。彼女の口元には特徴的な微笑みが浮かんでいた。「あなたたちが何を指しているのか分かりませんが、私と羽柴明彦さんとの感情は自然に生まれたものです。それに、私たちが知り合った時、彼はすでに羽柴夫人と別居していました。羽柴夫人がこれによって何らかの傷を負うとは思いません」そう言うと、胸を張り、10センチはあるハイヒールで室内へと歩いていった。