第441章 まだ一つの生き道がある

羽柴明彦は笑みを引っ込め、両手をポケットに入れた。「で、昨夜は一体どこにいたんだ?」

来るべき質問は必ず来る。夏目芽依は彼を見つめ、「友達の家で一晩泊まったの」と答えた。

「どの友達だ?」

この質問は夏目智子が聞いたのとまったく同じだった。芽依は気まずそうに言った。「あなたの知らない人よ」

羽柴明彦は彼女を見つめた。目には疑いの色が浮かんでいたが、それ以上追及はしなかった。それよりも、もっと重要なことがあった。

「記者たちが近々君を探しに来るかもしれない」

芽依はマンションの前に集まっていた一群の人々を思い出した。彼の言う通りだった。しかも「かもしれない」ではなく、すでにそうなっていた。

「もし質問されたら、言葉遣いに気をつけるように」羽柴明彦は言った。アドバイスというより、要求に近かった。