第469章 理由は必要ない

「旦那様、奥様、お話しなさってください。私は先に夕食の準備をしてきます」と鈴木ママは言った。「遅く食べると消化に良くないですから」そう言うと、彼女はキッチンに入り、夏目芽依と羽柴明彦の二人だけを残した。

夏目芽依が振り向いて彼を見ると、羽柴明彦はポケットに両手を入れたまま、二人の間の離婚の約束を破ったことに対して少しの後悔も見せていなかった。

実はこの件は結局のところ金田直樹のせいだった。

あの日、彼は気分が沈み、金田家に行って愚痴をこぼした。二人は長い間話し合ったが結論は出ず、金田直樹は羽柴明彦に小さな提案をした。

「私が思うに、君たちはまだ離婚しない方がいいんじゃないか」少し酔った金田直樹はグラスを揺らしながら羽柴明彦に言った。「君はいつも自分の思うままに行動するタイプじゃないか、先のことを考えすぎたり優柔不断になったりすることはないのに、なぜ感情の問題になると自分の意志に反することばかりするんだ」