二人は車の中で話していると、突然、高橋山雄が急いで会社のビルから出てくるのを見た。
「しっ…」夏目芽依はすぐに羽柴明彦の口を手で覆った。
しかし高橋山雄は彼らがいる方向を一度も見ることなく、見たとしても、彼は羽柴明彦の車を知らないだろう。
「俺の車が防音じゃないと思ってるのか?」羽柴明彦は彼女の手を引き離し、車のエンジンをかけた。
「何をするつもり?」夏目芽依は尋ねた。
「後をつけて、彼がそんなに急いでどこに行くのか見てみよう。」そう言って、彼は振り向いて言い聞かせた。「シートベルトをして。」
車は高架道路に乗り、羽柴明彦はできるだけ一定の速度を保ち、遠すぎず近すぎない距離で後をつけた。高橋山雄が郊外の方向に向かっていくのが見えた。
「彼はどこに行くと思う?」夏目芽依は尋ねた。