雰囲気が急に緊張したのを感じ、夏目芽依は思わず息を止めた。
彼女は今日になってようやく理解した。羽柴明彦は特定の誰かを標的にしているわけではなく、彼はただこのような話し方に慣れているだけなのだ。本来は悪意がないのかもしれないが、いつも相手を圧倒するように見える。
高橋山雄の表情に変化が見られたが、彼はそれをよく抑えていた。「羽柴さん、それは誤解ですよ」
「私は病院や特定の医師に妻の診療記録を削除するよう特別に要求したわけではありません。ただ、今後の診察と治療はすべてアメリカで行うことになり、病院はすべての書類をアーカイブしてアメリカに送りました。彼らがこれらの資料をもはや病院のデータベースに保持する必要がないと判断したかどうかは、病院が自由に決定する権利があると思います。この件は完全に私とは無関係です」