第476章 取引として

「よくも電話を切るな!」羽柴明彦は信じられない顔をしたが、考え直してみると、夏目芽依は今きっと気分が悪いのだろう、とりあえず彼女を責めるのはやめて、今回は許してやろう。

ところが、数分後、夏目芽依から再び電話がかかってきた。

「羽柴明彦、お願いがあるんだけど」

「今さら頼みごとか、さっき電話を切ったのは誰だ?」羽柴明彦は不機嫌に尋ねた。

相手が黙り込むのを聞いて、また怒って電話を切られるのを恐れ、すぐに折れた。「何を手伝えばいい?」

「あの日の医者にもう一度会いたいの」

翌朝、高橋山雄は朝食を済ませ、出かける準備をしていた。

「一緒に行くか?」彼は服を着終え、食卓に戻り、まだお粥を食べている夏目芽依に言った。

夏目芽依は顔を上げて彼を見た。昨晩、高橋山雄が今日は重要な話を彼女だけにすると言っていたことを思い出し、特に会社で会う約束をしていた。