まだ門の前に着く前に、羽柴明彦はすでに門の前に見知らぬSUVが停まっているのを見た。
彼は車をガレージに停め、夏目芽依と一緒に門をくぐった。
「ご主人様、お客様がいらっしゃいます」鈴木ママはドアを開けて、小声で言った。
この人里離れた家にまさか客が来るとは、羽柴明彦は驚いた。「誰だ?」
鈴木ママは首を振った。「私も存じ上げませんが、ご主人様とはお知り合いだとおっしゃっていました。今、リビングでお待ちです」
夏目芽依は恐る恐る家の中を覗き込み、五つ星ホテルのシェフである中村海斗がソファから立ち上がり、二人に向かって歩いてくるのを見た。
「羽柴さん、こんにちは、また会いましたね」中村海斗は率先して手を差し出した。「事前に連絡もせずに突然お邪魔して、本当に申し訳ありません。ですが、どうしてもお願いしたいことがあるのです」