第508章 ただの手滑り

羽柴明彦が玄関に入ると、鈴木ママが興奮した表情で入り口に立っていた。

「旦那様、奥様がお帰りになりました!」

羽柴明彦は一瞬固まった。「帰ってきた?どういう意味だ。」

「奥様が引っ越してこられたんです。今、二階でお風呂に入っていらっしゃいます。」鈴木ママは言いながら、横にあるスーツケースを押してみせた。「ほら、この大きなスーツケースも持ってきたんですよ。でも、さっき持ち上げようとしたんですが、重くて運べなくて。旦那様に上に運んでいただけますか。」

羽柴明彦はスーツケースを手に取り、二階へと向かった。

夏目芽依はちょうど風呂から上がり、髪を乾かして、スキンケア用品を塗ろうとバスルームから出てきたところ、部屋に人が立っているのを見て大きく驚いた。「あ、あなた...いつ入ってきたの!」