羽柴美波が会社から帰ってきて、車が自宅のマンションに曲がると、見覚えのある車が停まっているのが見えた。
「いとこ?」彼女は窓を下げて呼びかけた。
車両情報を登録していた木村城太は彼女に頷き、羽柴明彦が電話中であることを示した。後ろからまた車が入ってくるのを見て、羽柴美波は数秒迷った後、前に進み続けた。
車を停めると、ちょうど羽柴明彦が正門から入ってくるのが見え、彼女はすぐに駆け寄った。
「いとこ、今日はどんな風が吹いてここに来たの?あなたが自分から私の家に来るなんて珍しいわよ〜」
羽柴明彦は彼女を見下ろし、微笑んで言った。「もちろん用事があるからだよ。最近どう?仕事には慣れた?」
「すごく慣れたわ」羽柴美波は顔を輝かせ、得意げな表情で言った。「新しいマンションプロジェクトを終えたところなの。私が第一責任者で、なんと社長から前代未聞の褒め言葉をもらったのよ。知ってるでしょ、父はめったに人を褒めない人だし、特に私に対しては厳しいから。彼に認められたということは、少なくとも私が家族の会社でただぶらぶらしているわけじゃないってことでしょ?」