羽柴明彦は車を病院の正面玄関に停め、ドアを開けると、まっすぐ救急室へ向かった。
通りかかった看護師を捕まえて、焦りながら尋ねた。「今晩、交通事故に遭った人はどこにいますか?」
救急の看護師は不機嫌そうに彼を一瞥した。「今夜の交通事故は一件や二件じゃないわよ。一人一人探してあげられるわけないでしょ?」そう言うと、彼を無視して点滴バッグを抱えて点滴室へ向かった。
仕方なく、羽柴明彦は自分で探すことにした。診察室のドアを一つ一つ開け、間違っていれば謝り、退出して、恥ずかしそうに次の部屋へ向かう。こんな恥ずかしい思いをするのは久しぶりだった。
「まだ痛い?」中村景吾は頬杖をついて、そっと尋ねた。
夏目芽依は首を振った。「今はそんなに痛くないけど、さっき看護師が傷を消毒してくれた時は気絶しそうなくらい痛かった。まるで傷口に塩を振りかけられたみたい。」