何年も前の歩行者通りは今や様変わりし、店舗の前には木が植えられ、花や草が添えられ、車道からの騒音や汚染を遮っていた。ただ、それは店への客足にも大きく影響していた。
「羽柴社長、ここです」木村城太は路肩の一時駐車スペースに車を停め、振り向いて彼に言った。
「以前、その探偵事務所は5号棟2階段の6階にありましたが、今行っても意味はありません。とっくに引っ越してしまいましたから」
この場所には彼はすでに一度来ており、何も見つからなかったのだが、羽柴明彦はどうしても自分の目で確かめたいと言い張った。
「ここで待っていてくれ」そう言うと、羽柴明彦はドアを開けて車を降りた。
この辺りの店舗は新しいものも古いものもあり、彼は看板が最も古そうな果物店を選んで歩いていった。適当に果物を数個選び、袋に入れてレジへ持っていった。