第551章 私に教えてくれたら

夏目芽依は書斎の中を歩き回り、指で本の背表紙を一冊一冊なぞっていた。歩きながら、時間を潰すための本を探そうとしていた。

書棚には様々な分野の本が所狭しと並んでいた。経済学、経営学、数学から小説、詩集、エッセイ集まで、さらには写真集や民間切り絵の記念帳までもが置かれていた。

書棚の端に来ると、夏目芽依は適当に一冊の本を引き抜き、ぱらぱらとめくった。元の場所に戻そうとした時、ふと本が抜けた場所の下に何かが挟まっているのに気づいた。周りの数冊の本も取り出してようやく見えたのは、一枚の集合写真だった。

「高校三年一組…」彼女はそこに書かれた文字を見た。「なるほど、高校の卒業記念写真か〜」

夏目芽依は写真をじっくり見て、羽柴明彦の姿を探そうとしたが、見つからなかった。

「おかしいな…もしかして彼のクラスじゃないのかな…」と彼女はつぶやいた。