「どうぞ」助手がドアを開け、夏目芽依を中に通した。
「お座りください」目の前にお茶が置かれた。前回支払った5000元の手付金のおかげで、この探偵事務所にようやく余裕ができたのか、今回はついに白湯を熱いお茶と偽ることはなかった。
竜介兄さんはノートを手に歩いてきて、彼女の向かいの机に座った。「あなたが求めている情報はここにあるはずです。ただ、当初私たちに調査を依頼した人は守秘義務契約に署名しており、他人に情報を漏らすことについては明確な規定がありました」
「守秘義務契約?」夏目芽依は驚いて彼を見つめた。この汚くて小さな探偵事務所では、書類が至る所に積み上げられ、鍵のついた引き出しさえないのに、守秘義務契約に署名したところで、どんな秘密が守れるというのだろう?
「ご存知の通り、私たちの仕事は他人のプライバシーを探ることが多いんです」と竜介兄さんは言った。「プライバシーというのは、誰にとっても大切なものです。もし簡単に他人に知られてしまったら、私たちの看板はとっくに潰れているでしょう」