第572章 もしかしたら同一人物かもしれない

竜介兄さんの探偵事務所を出た夏目芽依は、どうしたらいいのか分からなくなった。今日聞いた情報があまりにも衝撃的だったからだ。

当時の誘拐事件については、長い捜査の末、警察は最終的に犯人を捕まえた。ただ、この事件は06年に起きたのに、犯人が足がつくまでに3年もかかった。

「当時の状況についても、私はここにメモしておいたんだ」竜介兄さんは自分の手帳を見つめながら言った。「犯人は自分の罪を認め、誘拐は純粋にお金のためだったと主張した。しかし、後に事態が大きくなり、恐れて被害者を解放したと言っている」

夏目芽依は驚いて彼を見た。「恐れて人を解放した?」

彼女は羽柴明彦の背中に刻まれた無数の刀傷を思い出した。少なくとも20箇所はあるだろう。もし金目当てだけなら、こんな残忍なことをする必要はないはず...そして、そんな異常な誘拐犯が恐怖で人を解放するなんて、どう考えても辻褄が合わない。