第569章 どうしたいの

羽柴明彦が振り向くと、ベッドには誰もおらず、夏目芽依が窓に跨り、半身を外に乗り出していた。

「何をしているんだ?」彼は眉をひそめた。

夏目芽依は両手で窓枠をしっかりと掴み、振り返って彼を一瞥すると、心の中で大変なことになったと思った。彼が気づかないうちに窓から隣の部屋に移り、別のルートで逃げようと思っていたのだ。先ほど羽柴明彦を怒りに任せて殴ったことは、彼にとって死罪に値することだろうと彼女は知っていた。

片足がすでに隣の窓の縁に届きそうになっていたので、彼女は素早く体を回転させ、隣の窓の手すりを掴んで重心をそちらに移そうとした。

羽柴明彦が大股で近づき、彼女が動く前に腕を掴んだ。「一体何をしようとしているんだ?」

何をしようとしているって、それを聞く必要があるの?もちろん命からがら逃げようとしているんだよ!夏目芽依は心の中で叫びながら、さらに前に身を乗り出し、足を急いで向こう側に伸ばそうとしたが、腕は羽柴明彦にしっかりと掴まれたままで、窓の上に宙吊りになった非常に厄介な姿勢になってしまった。