第568章 人を殴るのは本気だ

ベッドに横たわり、羽柴明彦は手を伸ばして脇に置いてあった携帯電話を取り、不在着信がないことを確認すると、心に疑念が湧いた。

午後、会社で夏目芽依が自分を訪ねてきたのは、謝罪のためであれ何であれ、きっと言いたいことがあったはずだ。彼女の性格からして、どうしてこんなに我慢強いのか、自分がまだ怒っていることを知っていながら、今まで我慢して電話もかけてこないなんて。

もしかして...何か起きたのだろうか?

一度悪い考えが浮かぶと、すぐには止められない。もし何かあったとしたら、彼女はもっと自分に連絡するべきではないか?できない状況でもない限り。そう考えると、羽柴明彦はベッドから身を起こした。

しかし、家出したのは自分だ。今さら情けなく帰るのは本当に恥ずかしい。彼はこれまでの人生でこんなに恥ずかしい思いをしたことがなかった。