「どうしてそんなに長く行ってたの?」展示ブースに戻ると、田中晴は不機嫌な顔をしていた。
夏目芽依は口をとがらせた。さっき狂った女と言われたばかりで、彼女も当然機嫌が良くなかった。周りを見回すと、立ち止まる人はほとんどおらず、自分がいてもいなくても大差ないと感じた。
「もう少しの辛抱よ、あと20分ほどで終わりだから」田中晴は彼女の肩を叩いた。
夏目芽依は自分の位置に戻り、すぐに作り笑顔を浮かべた。
ブティックの中で、羽柴明彦はシャツを一枚手に取り、「これにするよ。会計は頼む、俺は着替えてくる」と木村城太に指示して、さっと更衣室に入った。会議の時間が迫っており、彼は一秒も無駄にしたくなかった。
早く終わってほしい、足がすごく疲れたし、痛い!夏目芽依は心の中で叫び、黙々と数を数えて時間を計算し、いつ終わるのかわからなかった。今過ごす一分一分が一年のように長く感じられ、特に羽柴明彦に出くわした後はなおさらだった。彼らがもう行ったかどうかも分からない。