夏目芽依はぎょっとして息を飲んだ。向こうから歩いてくるのは、まさに羽柴明彦と木村城太だった。
ここは風光グループからそう遠くないとはいえ、こんな偶然があるとは思いもしなかった。昼間から、彼らはショッピングモールで何をしているのだろう?
「羽柴社長、こちらです」入口を通ると、木村城太が先導した。「品物はあとで受け取れますので、便宜上、私は特に7階のイタリアンレストランを予約しておきました。評判がとても良いそうです。まずそちらに行きましょう」
幸い、二人はホールの中央のイベントに全く興味を示さず、見向きもせずに、まっすぐエレベーターへ向かった。夏目芽依は密かにほっとして、危機一髪だったと思った。
ここ数日、彼女と羽柴明彦の関係はやや微妙だった。以前の対立はまだ解決しておらず、誰も先に口を開こうとせず、静かな状態が続いていた。夏目芽依はこれでもいいと思っていた。少なくとも彼女に息をつく時間を与えてくれたが、もし今日のこの姿を彼に見られたら、どんな結果になるか分からない。