夏目芽依は再び羽柴明彦のオフィスに来て、ソファに座った。
今回は木村城太の指示がなく、お茶を出してくれる人もいなかった。彼女は仕方なくバッグから持参したミネラルウォーターを取り出し、キャップを開けて数口飲んだ。
振り返って整然としたデスクと、彼女一人だけがいる広々とした部屋を見て、ふと一計を案じた。
以前の注文書とパンフレットは確かにここに置いてあったはずだ。もし誰かが忍び込んで持ち去ったのでなければ、羽柴明彦が意図的に隠して彼女を困らせているのかもしれない。その可能性は低いとはいえ、完全に否定はできない。結局のところ、物を見つけるためには、あらゆる可能性を排除するわけにはいかないのだ。
夏目芽依は立ち上がり、デスクの周りを一周した。
注文書は折りたたんで持ち歩けるとしても、製品紹介パンフレットのような大きなものは持ち歩けるはずがない。