テーブルの上にきちんと置いてあったものが、どうして見えなくなったのか、夏目芽依はとても不思議に思った。
しかし、よく考えてみれば、羽柴明彦が自分に嘘をつく必要はない。それは彼にとって何の利益もないはずだ。誰かが中に入って密かに触ったのでない限り。しかし、ここは風光グループだ。中にいるのは全て内部の従業員だ。社長の机の上のものに勝手に手を出すなんて、仕事を変えたいのだろうか?
焦りと苛立ちで、夏目芽依は自分の頭を叩いた。「本当にバカだった…」結局は自分が不注意すぎたのだ。急いで出て行ったために、机の上のものを回収するのを忘れてしまった。今となっては、戻って正直に話すしかない。
「何だって?注文書を無くした?」田中晴は眉をひそめ、彼女を不思議そうに見た。「こんな初歩的なミスが…どうしてあり得るの?郵送で紛失する可能性があるからこそ、あなたに直接持って行かせたのに、どうしてこんなことに?」