「一人で行けるの?私が付き添った方がいい?」羽柴美波が自ら提案した。
夏目芽依は首を振った。彼女は本当に契約を結びに来たわけではなく、もし口実だとバレたら困るからだ。「大丈夫、自分で見つけられるから」
「じゃあ気をつけてね、私は先に上がるわ〜」宏立グループの入り口に立ち、羽柴美波は彼女に別れを告げた。
夏目芽依は彼女の態度が随分変わったように感じていた。以前は会うたびに高慢ちきで人を見下し、皮肉を言わなければ話せないような人だったのに、今は別人のように変わり、敵意を持たず、むしろ友達のように接してくる。
よく考えてみると、この変化は彼女が自分を高橋山雄の娘だと知った時から始まった。人がここまで現実的になれるとは、信じられないと思った。
夏目冬美の電話がようやく繋がった。