第20章 悪徳資本家

笹木社長は昨夜の男によく似ていたが、ただ似ているだけで、彼であるはずがない！

「何かあれば私の秘書に連絡して！」冷たい言葉を残して。

限定版の高級車が、「キィ」という音を立てて走り去った！

「ちょっと……笹木社長……」石塚千恵が一、二歩走ったところで、車はすでに車の流れの中に入っていた。

「ケチな奴、悪徳資本家！」石塚千恵は怒って足を踏み鳴らし、それから腰をかがめて地面の財布を拾った。「財布が落ちたって教えようとしただけなのに？」

交差点に着いたとき、石塚千恵はようやく麻珠市支局がこの近くにあることに気づいた。

この5年間、彼女はほぼ毎月一度訪れ、子供の情報がないか尋ねていた。

今日はちょうど……

「石塚さん、何度も言っていますが、お子さんについて新しい手がかりがあれば、必ず最初にあなたに連絡します！」警察官はとても不機嫌そうに言った。

事件当時の監視カメラ映像も、目撃者も、何もかも無い、どこから行方不明の赤ちゃんを探せばいいのか？

数年前にすでに未解決事件として処理されているのに、まだ何を聞きに来るのか！

また一度の失望、また一度の打撃。

石塚千恵の鼻先は思わず酸っぱくなり、目は制御できずに湿気を帯びた。

彼女は残された希望をただ警察に託すしかなかった。「今日は私の子供の5歳の誕生日です。本当に子供に会いたいんです。どうか子供を見つけてください、お願いします、お願いします！」

彼女は本来、黙って耐える人ではなかったが、子供のことに関しては、コネのない彼女には怒る余裕もなく、ただ丁寧に頼むしかなかった！

「わかりました、それは私たちの責任です！」警察官は適当に答え、振り向いて自分の仕事に戻った！

情報を得られなかった石塚千恵は、また一度気落ちして出ていこうとした！

「ドン——」

支局の正門に着いた彼女は、突然飛んできた「小さな肉団子」にしっかりとぶつかられ、数歩後ずさりした。

「通報しに来たんだ、お父さんがどこかにいなくなっちゃったの、お巡りさん、早くお父さんを探すの手伝って！」小さな肉団子は自分の家の裏庭を歩くかのように、威勢よく中に突進した。

「おやおや、坊ちゃんまた来たの？」先ほど石塚千恵に不機嫌だった警察官が、犬のように走り寄り、熱心に小さな男の子に声をかけた！