第213章 おとぎ話の夢

部屋の雰囲気は激しい動揺から、静かな不気味さへと変わった。

口をきつく閉じた石塚千恵は身体の上の重みを力強く押しのけ、よろめきながらトイレへと駆け込んだ!

汗を滲ませた笹木蒼馬は息を切らしながらベッドから降り、タバコに火をつけ、ソファに座って休んだ!

石塚千恵は恥ずかしさと照れを感じながら戻ってきた。「笹木社長、早く休んでください。私はもう帰ります!」

濡れた口元を拭いた!

笹木蒼馬は彼女の小さな手を引っ掛け、力強く自分の胸元に引き寄せた。「今でも私を笹木社長と呼ぶの?よそよそしすぎじゃない?」

「じゃあ私は……何て呼べばいいの?蒼馬?蒼?恥ずかしくて照れくさくて、呼べないわ」石塚千恵は頭をひねって言った。

「笹木蒼馬でいいよ!」彼は笑った。

石塚千恵は慎重に彼を見つめた。「本当にいいの?私、あなたのフルネームを直接呼ぶなんて怖いわ!」

「何がいけないの?呼んでみて!」

「笹、笹木蒼馬!」石塚千恵はどもりながら、そして微笑んだ。「まだ慣れないわ!」

「徐々に慣れるよ!」

「うん!」石塚千恵はうなずいたが、将来本当に慣れるかどうか確信が持てなかった。なぜなら、彼女にとってその名前は千斤の重みがあったから。

二人の間の距離はほんの少しではなかった。

でも今夜は楽しかったし、感動もした。もし時間がこの瞬間に永遠に留まり、甘い夢から二度と目覚めることがなければ、どんなに素晴らしいだろう!

彼女は本当に童話の中のお姫様でいたかった。毎日幸せで楽しく、何の心配もなく!

「今夜は本当に楽しかった。あなたに感謝してるわ、こんな芝居に付き合ってくれて!」

笹木蒼馬は彼女の礼儀正しさに少し不機嫌になった。「もう感謝しなくていいよ。さっきもう行動で十分感謝してくれたじゃないか、満足だよ!」