第208章 ジレンマに陥る

石塚千恵が電話をかけてきたとき、笹木蒼馬はちょうど数人の幹部と話し合いをしていた。このような厳粛な場では、幹部たちでさえ電話がかかってきたらすぐに切り、後で対応するものだった。

しかし笹木蒼馬は彼らに軽く頷いて合図し、口元に笑みを浮かべながら脇に寄って電話に出た。その態度はかなり傲慢とも言えるものだった。

「忙しいの?お仕事の邪魔をしてる?」石塚千恵はとても小さな声で尋ねた。

今、窓際に立っている笹木蒼馬の顔に、笑顔がどんどん大きくなっていった。「いいえ、大丈夫だよ」

実際には、この時、幹部たちは全員会話を中断して彼を待っていた。

「ふふ、それならいいけど、大江守人が警察に捕まったって、これってあなたに関係あるの?」疑問文ではあったが、石塚千恵はきっとそうだと分かっていた。