第219章 目的もなく

橋口俊樹は皮肉を言われて顔を赤らめた。「千恵、僕は君を感動させようとしたわけじゃない。ただ償いたいし、両親にもちゃんと孝行したいんだ！」

「まず、あなたが私に与えた傷はもう形になってしまった。一食や二食作ったくらいで償えるものじゃないわ。それに私の両親に孝行するなんて、全く必要ないわ。そもそも彼らはあなたの両親じゃない。私たちの結婚が終われば、あなたと私の両親は何の関係もなくなるのよ。それに、たかが一食二食作ったところで、どれだけ孝行になるっていうの？」

「……」橋口俊樹は反論できなかった。

「だから無駄な努力はやめなさい。朝食を作るのもあなたの仕事じゃないわ。うちの真理子さんが作るお粥はあなたのより遥かに美味しいわよ！」石塚千恵は冷たく言い放ち、身に着けていた上着を脱いで彼に返した。「私は一人で冬の雨の中で一晩中立っていたことがある。全身びしょ濡れになっても、誰も上着をかけてくれなかった。私はもう凍えきった人間よ。この程度の冷たい風なんて大したことないわ！」