道中の花に悩まされ

　秋山直子。田舎育ちで、1年間の行方不明者になり、休学を経て千葉県の名門高校に編入したばかりの、どこか影のある少女。
実母に引き取られた先の新しい家族は、名家の継父、天才と名高い義兄、成績優秀な義妹と、きらびやかな面々。「あの子達の顔に泥を塗らないで」――実母の言葉が、直子の肩に重くのしかかる。

そんな彼女の婚約者は、神崎深一。気だるげな雰囲気とは裏腹に、東京の経済界にも影響力を持つ大富豪の御曹司だ。
彼は周囲にこう紹介する。「俺の直子は、田舎者で世間知らずなんだ。経済のことも疎いし、ちょっと気難しいけど……まぁ、みんなよろしく頼むよ」
だが、それは彼なりの優しさなのか、それとも――？

ある日、深一が追っていた某大物の調査の過程で、彼の有能な部下が偶然衝撃的な事実を発見してしまう。それは、深一が「何も知らない」と言っていたはずの直子の、信じられないような「隠された一面」だった。
（……え、奥様、一体何者なんですか！？）部下は驚愕のあまり、思考が停止する。

これは、お互いの「とんでもない素性」を隠し合うカップルの物語。彼らが秘密を打ち明ける時、何が変わるのでしょう？



二人の隠しこと

森田佳代は少し顔を上げると、少し怖そうな隣席の女子が美しい瞳を細め、口笛を吹いたのが見えた。


声は無造作で、片手をポケットに入れ、体を少し傾け、かなり気楽な様子でバイクに乗った少年たちを見ていた。


この人、なぜ笑っているの……


不良についての噂はあまりにも多く、森田佳代はそれを考えただけで足がガクガクしていた。


彼女は秋山直子の手首を掴み、関節が浮き出て、指先は白くなっていた。


「徳田さん、結城杭たちが俺たちの学校の生徒をいじめてるのが、あなたの目の前まで来てるぞ」橘声也も焦っていた。彼はタバコを咥え、短く刈り上げた髪をなでながら、眉を上げて徳田月光を見た。


徳田月光は眉を少し上げた。彼の外見は穏やかだったが、その伏せられた瞳は冷たかった。「余計なことに首を突っ込むな……」


012 私の先祖