「どうして私の荷物に楽譜があるって知ってるの?」田中静は病気で弱っていて殺傷力はなかったが、顔を引き締めると、その眉目に鋭さが垣間見えた。「あなたが持っていったの?」
秋山言葉の印象では田中静はただの田舎のおばあさんだったが、こんな迫力があるとは知らなかった。「持っていません」
彼女は思わず後ずさりして、少し怖くなった。
「そう?」田中静は濁った目を細めて、秋山言葉をじっと見つめた。「この件について何か企んでないことを願うわ。その楽譜には手を出さない方がいいわよ」
秋山言葉は顔色が青ざめ、背筋に冷たいものを感じた。「おばあちゃん、何を言ってるの?」
「私が何を言ってるか、あなたはわかってるはずよ」田中静は数回咳をした。
外では宮本晴が水差しを持って、部屋に入るとすぐに秋山言葉の顔色が青ざめ、ショックを受けたような様子を見て、思わず田中静の方を見た。