098 楽譜（連載開始のお知らせ）

「ダブルハーモニックスと左手のピチカートだけじゃないの？」

「ダブルハーモニックスって、指の腹を弦の上に浮かせて、押さえつけずに、音程の位置を正確に見つけて、弦の振動を制御することでしょ？」

「左手のピチカートという技術はダブルハーモニックスより難しいけど、バイオリンについて少し知っている人なら誰でもこの奏法を知っているわ。」

「そんなことを知っていて誇らしいの？」

「秋山直子のポイントはそこじゃないわ。秋山言葉はダブルハーモニックスと左手のピチカートの技術に熟練していないの。彼女のダブルハーモニックスはとても硬く、弦の振動は安定せず、右手が弦に触れる時にぎこちなくて、出てくる音が滑らかじゃないわ。」

「それに彼女の左手のピチカートはもっと問題があるわ。秋山言葉がD線をはじく時はいつも鈍い音になる。力を入れる勇気がないからよ。秋山直子が推測するに、秋山言葉も自分で試したことがあるはず。もし音がクリアになれば、きっとE線も鳴らしてしまうでしょうね。」