道中の花に悩まされ

　秋山直子。田舎育ちで、1年間の行方不明者になり、休学を経て千葉県の名門高校に編入したばかりの、どこか影のある少女。
実母に引き取られた先の新しい家族は、名家の継父、天才と名高い義兄、成績優秀な義妹と、きらびやかな面々。「あの子達の顔に泥を塗らないで」――実母の言葉が、直子の肩に重くのしかかる。

そんな彼女の婚約者は、神崎深一。気だるげな雰囲気とは裏腹に、東京の経済界にも影響力を持つ大富豪の御曹司だ。
彼は周囲にこう紹介する。「俺の直子は、田舎者で世間知らずなんだ。経済のことも疎いし、ちょっと気難しいけど……まぁ、みんなよろしく頼むよ」
だが、それは彼なりの優しさなのか、それとも――？

ある日、深一が追っていた某大物の調査の過程で、彼の有能な部下が偶然衝撃的な事実を発見してしまう。それは、深一が「何も知らない」と言っていたはずの直子の、信じられないような「隠された一面」だった。
（……え、奥様、一体何者なんですか！？）部下は驚愕のあまり、思考が停止する。

これは、お互いの「とんでもない素性」を隠し合うカップルの物語。彼らが秘密を打ち明ける時、何が変わるのでしょう？



二人の隠しこと

秋山直子は水を一口飲み、この言葉を聞いて、生涯「傲慢」という二文字で貫き、驚きというものを知らなかった彼女が、なぜか呆然としてしまった。


彼女はもともと神崎深一が古賀千暁のことについて、あるいは彼女の祖母のことについて話し合いに来たと思っていた……


誰が知っていたことか、彼は何も聞かずに、いきなり彼女が古賀千暁をかばっていたことを暴いたのだ！


秋山直子は無表情でバーの入り口を見て、頭を下げて少し考え込んだ……


今なら逃げられるだろうか？


しかし相手は事実をもって彼女に教えた、無駄だと。


「そうでしょう？」神崎深一は後ろに寄りかかった。彼は生まれつき容姿が良く、笑うときはいつも何となく怠惰な雰囲気があった。


明らかに疑問文なのに、口調は異常に確信に満ちていた。


179 なぜ彼女が普通の人だと思ったのか？（二更）