綾辻栞の個室はそれほど広くなかった。
テーブルが一つと、四つのソファチェアが窓際に配置されていた。
綾辻栞は左側のソファチェアに座り、手をテーブルの端に置き、その横にはサングラス、キャップ、マスクが順序よく置かれていた。
黒い長いダウンジャケットはマネージャーによって脇に掛けられていた。
「栞、大御所は本当に来るのかな?」マネージャーは座らず、空いたスペースを行ったり来たりしながら、時々携帯を見ていた。
「うん」綾辻栞はマネージャーより落ち着いているように見えた。少し考えてから、彼はマネージャーを見て、「彼は何歳くらいだと思う?兄さんと呼ぶべきか、それとも兄弟と呼ぶべきか?」
綾辻栞は江戸川峰を数年前から知っていたが、相手の年齢や容姿などについては全く知らなかった。