道中の花に悩まされ

　秋山直子。田舎育ちで、1年間の行方不明者になり、休学を経て千葉県の名門高校に編入したばかりの、どこか影のある少女。
実母に引き取られた先の新しい家族は、名家の継父、天才と名高い義兄、成績優秀な義妹と、きらびやかな面々。「あの子達の顔に泥を塗らないで」――実母の言葉が、直子の肩に重くのしかかる。

そんな彼女の婚約者は、神崎深一。気だるげな雰囲気とは裏腹に、東京の経済界にも影響力を持つ大富豪の御曹司だ。
彼は周囲にこう紹介する。「俺の直子は、田舎者で世間知らずなんだ。経済のことも疎いし、ちょっと気難しいけど……まぁ、みんなよろしく頼むよ」
だが、それは彼なりの優しさなのか、それとも――？

ある日、深一が追っていた某大物の調査の過程で、彼の有能な部下が偶然衝撃的な事実を発見してしまう。それは、深一が「何も知らない」と言っていたはずの直子の、信じられないような「隠された一面」だった。
（……え、奥様、一体何者なんですか！？）部下は驚愕のあまり、思考が停止する。

これは、お互いの「とんでもない素性」を隠し合うカップルの物語。彼らが秘密を打ち明ける時、何が変わるのでしょう？



二人の隠しこと

秋山直子は頭を下げ、住所を見た。


向こうの古賀千暁がまだ返信していないのを見て、そのままメッセージを撤回した。


車に乗る時、彼女は眉をひそめて神崎木を一瞥した。


神崎木と長く一緒にいると、もしかして知能も感染するのだろうか？


神崎木は秋山直子が自分を見ているのに気づき、思わず頭をかいた。「秋山さん、戻りますか？」


彼は秋山直子がまた彼を闘技場に戻らせるのではないかと思った。


秋山直子は車に乗り込み、志賀明がエアコンをつけると、上着を脱いでそばに置き、声を抑えて答えた。「戻らない」


志賀明は少し考えてから答えた。「邸宅には室内トレーニング場がありますが、あまり広くありません。通常は各堂主が使用するもので、私は行ったことがありませんが、神崎水さんはご存知でしょう」


221ハッカー（一更）