道中の花に悩まされ

　秋山直子。田舎育ちで、1年間の行方不明者になり、休学を経て千葉県の名門高校に編入したばかりの、どこか影のある少女。
実母に引き取られた先の新しい家族は、名家の継父、天才と名高い義兄、成績優秀な義妹と、きらびやかな面々。「あの子達の顔に泥を塗らないで」――実母の言葉が、直子の肩に重くのしかかる。

そんな彼女の婚約者は、神崎深一。気だるげな雰囲気とは裏腹に、東京の経済界にも影響力を持つ大富豪の御曹司だ。
彼は周囲にこう紹介する。「俺の直子は、田舎者で世間知らずなんだ。経済のことも疎いし、ちょっと気難しいけど……まぁ、みんなよろしく頼むよ」
だが、それは彼なりの優しさなのか、それとも――？

ある日、深一が追っていた某大物の調査の過程で、彼の有能な部下が偶然衝撃的な事実を発見してしまう。それは、深一が「何も知らない」と言っていたはずの直子の、信じられないような「隠された一面」だった。
（……え、奥様、一体何者なんですか！？）部下は驚愕のあまり、思考が停止する。

これは、お互いの「とんでもない素性」を隠し合うカップルの物語。彼らが秘密を打ち明ける時、何が変わるのでしょう？



二人の隠しこと

門番が使ったこの言葉に森田麒太は非常に驚いた。


この時代にまだ侵入してくる人がいるのか？どうやって侵入したのだろう？


森田麒太は何故か、心の底に不安を感じ、箸を置いて立ち上がり、外に出て何が起きているのか確かめようとした。


大広間のドアが「バン」という音と共に蹴り開けられた。


そして一群の人々が次々と入ってきた。彼らは凶悪な顔つきで、一人一人がほとんど血なまぐさい気配を漂わせ、腰には武器を差していた。ドア付近にいた使用人たちは皆、思わず後ろに数歩よろめき、恐怖に満ちた目でこの突然入ってきた見知らぬ人々を見つめていた！


これらの人々は二列に分かれ、真っ直ぐに立ち、玄関から大広間まで並んでいた。そして玄関口から、数人の人影がゆっくりと歩いてきた。


259秋山直子が彼女の目の前で、右手で一行の文字を書き下ろす（1更）