道中の花に悩まされ

　秋山直子。田舎育ちで、1年間の行方不明者になり、休学を経て千葉県の名門高校に編入したばかりの、どこか影のある少女。
実母に引き取られた先の新しい家族は、名家の継父、天才と名高い義兄、成績優秀な義妹と、きらびやかな面々。「あの子達の顔に泥を塗らないで」――実母の言葉が、直子の肩に重くのしかかる。

そんな彼女の婚約者は、神崎深一。気だるげな雰囲気とは裏腹に、東京の経済界にも影響力を持つ大富豪の御曹司だ。
彼は周囲にこう紹介する。「俺の直子は、田舎者で世間知らずなんだ。経済のことも疎いし、ちょっと気難しいけど……まぁ、みんなよろしく頼むよ」
だが、それは彼なりの優しさなのか、それとも――？

ある日、深一が追っていた某大物の調査の過程で、彼の有能な部下が偶然衝撃的な事実を発見してしまう。それは、深一が「何も知らない」と言っていたはずの直子の、信じられないような「隠された一面」だった。
（……え、奥様、一体何者なんですか！？）部下は驚愕のあまり、思考が停止する。

これは、お互いの「とんでもない素性」を隠し合うカップルの物語。彼らが秘密を打ち明ける時、何が変わるのでしょう？



二人の隠しこと

秋山言葉は秋山勇の現在の生活状況を知っていた。


これまで千葉に行くたびに工場から荷物を運ぶためで、手元のお金は全て細かく計算しなければならなかった。


千葉から東京までは距離が遠く、飛行機のチケットはおろか、電車賃でさえ安くはなく、ましてや東京に来てからの生活費、宿泊費なんて...


秋山勇がお金を持って東京に来たとしても、どこにここで宿泊する費用があるというのだろう？


宮本晴は視線の先を追い、一目で道の角に立っている秋山勇と秋山直哉の二人を見つけた。


秋山勇は確かに人並み外れた容姿をしているが、彼には少しの気品もなく、粗野で俗物的で、エリート層の中では瞬時に運転手やボディガード扱いされてしまうだろう。


二人の声を聞いて、運転手は車のスピードを緩め、バックミラーを見ながら、「奥様、お嬢様、お知り合いの方ですか？停車しましょうか？」


302 一家全員が天才！（一更）