道中の花に悩まされ

　秋山直子。田舎育ちで、1年間の行方不明者になり、休学を経て千葉県の名門高校に編入したばかりの、どこか影のある少女。
実母に引き取られた先の新しい家族は、名家の継父、天才と名高い義兄、成績優秀な義妹と、きらびやかな面々。「あの子達の顔に泥を塗らないで」――実母の言葉が、直子の肩に重くのしかかる。

そんな彼女の婚約者は、神崎深一。気だるげな雰囲気とは裏腹に、東京の経済界にも影響力を持つ大富豪の御曹司だ。
彼は周囲にこう紹介する。「俺の直子は、田舎者で世間知らずなんだ。経済のことも疎いし、ちょっと気難しいけど……まぁ、みんなよろしく頼むよ」
だが、それは彼なりの優しさなのか、それとも――？

ある日、深一が追っていた某大物の調査の過程で、彼の有能な部下が偶然衝撃的な事実を発見してしまう。それは、深一が「何も知らない」と言っていたはずの直子の、信じられないような「隠された一面」だった。
（……え、奥様、一体何者なんですか！？）部下は驚愕のあまり、思考が停止する。

これは、お互いの「とんでもない素性」を隠し合うカップルの物語。彼らが秘密を打ち明ける時、何が変わるのでしょう？



二人の隠しこと

会議室内で秋山四男坊と一緒に立ち上がって怒りを露わにしていた株主たちの声がすべて止んだ。


賑やかだった会議室が再び静かになった。


株主たちの中には秋山直子を知っている者もいれば、知らない者もいたが、例外なく全員がその女性がゆっくりと入ってくるのを静かに見つめていた。


一対の黒い瞳が鋭い気迫を放っていた。


「お嬢様、来られましたか」秋山執事は神崎木に騙されたのではないかと電話で確認したいくらいだったが、今、秋山直子を見て、椅子を引いて立ち上がった。


彼の隣に立っていた文はようやく安堵のため息をついた。


秋山蓮は終始落ち着いた態度を保っていた。


今も立ち上がり、会議テーブルの周りに座っている株主たちの方を向き、顎をわずかに上げ、ゆっくりとした口調で言った。「こちらは直哉の姉、秋山直子です。今回、直哉の代わりに後継者選挙に参加する人物です」


451 選抜開始！直子さんが罠を仕掛ける！（二更）