葉山先輩は書類を受け取り、手を少し止めて、軽く顔を上げた。「わかった、後輩、今夜は用事があるの?」
同じ研究室にいるので、葉山先輩は当然、秋山直子が最近忙しいことを知っていた。
「ちょっと用事があって、戻れないかもしれません」直子は携帯を見下ろし、マフラーを少し上に引き上げ、声はやや不明瞭だった。
秋山家の予選は夜7時からで、大家族の選抜だけに非常に正式なものだった。
一般的に大家族の後継者は選抜要件に従って特別に育成される人がいる。秋山四男坊はそのような特別な育成を受けた人物で、選抜の難易度は高いものもあれば低いものもある。彼が秋山直哉のために設定したのは、最高難度のものだった。
葉山先輩は立ち上がり、直子を見送った。
そして自分の席に戻り、ルームメイトと食事を続けた。