道中の花に悩まされ

　秋山直子。田舎育ちで、1年間の行方不明者になり、休学を経て千葉県の名門高校に編入したばかりの、どこか影のある少女。
実母に引き取られた先の新しい家族は、名家の継父、天才と名高い義兄、成績優秀な義妹と、きらびやかな面々。「あの子達の顔に泥を塗らないで」――実母の言葉が、直子の肩に重くのしかかる。

そんな彼女の婚約者は、神崎深一。気だるげな雰囲気とは裏腹に、東京の経済界にも影響力を持つ大富豪の御曹司だ。
彼は周囲にこう紹介する。「俺の直子は、田舎者で世間知らずなんだ。経済のことも疎いし、ちょっと気難しいけど……まぁ、みんなよろしく頼むよ」
だが、それは彼なりの優しさなのか、それとも――？

ある日、深一が追っていた某大物の調査の過程で、彼の有能な部下が偶然衝撃的な事実を発見してしまう。それは、深一が「何も知らない」と言っていたはずの直子の、信じられないような「隠された一面」だった。
（……え、奥様、一体何者なんですか！？）部下は驚愕のあまり、思考が停止する。

これは、お互いの「とんでもない素性」を隠し合うカップルの物語。彼らが秘密を打ち明ける時、何が変わるのでしょう？



二人の隠しこと

マネージャーは秋山執事からの電話を受けて、寒い冬の日に思わず身震いし、自分が聞き間違えたのではないかと疑った。


秋山蓮は撮影を終えて戻ってきて、椅子に置いてあった上着に手を伸ばすと、側にいたアシスタントが急いで水を差し出した。


「どうしたんだ？」秋山蓮はさりげなく上着を羽織りながら、水を飲みつつ、マネージャーを見た。


「いや……あなたの姪っ子……」マネージャーは顔を上げ、視線を秋山蓮に向けて、最終的に「変態じゃないか？」と言った。


それを聞いて、秋山蓮はグラスを持つ手が一瞬止まり、目を細めた。


マネージャーはしばらく考えてから、ようやく秋山直子を表現する言葉を見つけた。「徳田家のあのお爺さんは4年前から彼女を研究院の後継者にしようと目をつけていて、彼女のために千葉に3年も滞在したそうだ。彼女が変態でなければ何なんだ？」


497 明らかな排斥（二更）