517 身分、狂ったか(一更)

「これが君が大江家を支援する理由なのか?」神崎深一は特に動きを見せず、ただ淡々と顔を上げた。

その言葉を聞いて、男は目を細め神崎深一を見つめ、少し間を置いてから首を振った。「これだけの年月が経っても、お前はまだ成長していないな。最初から神崎家に引き取らせるべきではなかった。こんなに優柔不断な性格に育ってしまうとは。これだけ時間が経っても行動を起こさないとは、お前は神崎家の人々の目には大江薫よりも重要ではないようだな。お前の母親が神崎家の手によって死んだことを忘れたのか?」

ここまで言って、男は微笑みながら、静かに一言吐き出した。「お前には本当に失望したよ。」

神崎深一はただそれを聞いていた。ポケットに入れた手が少し強張り、漆黒の瞳に明らかな変化は見られなかった。「他に用がなければ、私は行くよ。」