第49章 かつての若奥様

「咲姫、やっと目が覚めたのね」立花心蕾は目を真っ赤にして、霧島咲姫が目を覚ましたのを見て、やっと胸をなでおろした。

彼女は手を伸ばして咲姫の体温を確かめ、ため息をついた。

「あなたね、二日間も眠りっぱなしだったのよ。一昨晩は39.8度まで熱が上がって、朝霧翔真はあなたのそばで一日一晩付き添ってたわ。私があまりにも見かねて、無理やり彼を寝かせたくらいよ」

彼女に言わせれば、この朝霧翔真もバカな男だわ。ただ黙ってそばにいるだけで、何の役に立つっていうの?

男というのは積極的に行動すべきなのに、どうしてそれが分からないのかしら。

霧島咲姫は目覚めたばかりで、喉がカラカラに渇いていたが、立花心蕾はずっとそこで話し続け、何か様子がおかしいことにまったく気づいていなかった。

彼女は立花心蕾の手をぐっと掴み、自分の口を指さした。

——心蕾!水。

「あっ、私ったら何考えてるの、慌てちゃって。すぐに持ってくるわ」立花心蕾は急いで振り返り、コップ一杯の水を注いだ。それでも足りないと思い、思い切って水差し全体を持ってきた。

「すぐに朝霧兄に電話するわ。彼は誰よりもあなたを心配してたんだから。咲姫、あなたはいつもこうして人を心配させるのね。あなたがどれだけ私たちを心配させたか分かる?」彼女はソファに座り、諭すように言った。今の咲姫は全体的に痩せて、もともと骨と皮だったのに、今はさらに別人のようになっていた。

立花心蕾は傍らに座り、目には心配の色が浮かんでいた。

「朝霧兄はあんなに丈夫な体なのに、もう限界だったわ。彼がいてくれて本当に良かった。でなければ、私は本当にどうしたらいいか分からなかったわ」

これは朝霧翔真に買収されたからではなく、神城連真と比べると、この朝霧翔真はあまりにも良すぎるのだ。

見た目もいいし、体格もいい。何より朝霧翔真の性格や気質は、あの脳みそのない最低男・神城連真よりずっと良かった。

石ころを真珠だと思い込んでいたようなものだ。

——心蕾、彼に電話しないで。もう十分迷惑をかけてるから。

霧島咲姫は無意識に拒否しようとした。朝霧翔真は自分に十分良くしてくれている。これ以上良くされたら、どう返せばいいのか分からなくなる。