第130章 急所に当たらなかった

あなたは絶対に何も起こってはいけない。

霧島咲姫は救急室の外に立ち、目には涙を浮かべながら、中の様子をじっと見つめ、心の中は後悔でいっぱいだった。

「咲姫、彼は大丈夫だよ」朝霧翔真は眉をひそめ、心配そうな目で言った。

なぜ、また彼なのか。

しかし霧島咲姫は振り返り、黙って首を振った。

——すべて私のせいで、彼が怪我をした。翔真、あなたには分からない、彼は私を救うためにこうなったのよ。

そう思うと、霧島咲姫は眉をひそめ、歯を食いしばりながら手振りで伝えた。自分の体にもかなりの擦り傷があったが、彼女はそんな小さな問題をすでに完全に無視していた。

朝霧翔真は心を痛め、彼女を近くの救急処置室に連れて行って傷の手当てをした。

「手術はまだ1時間以上かかる。ここで傷を処置してから彼に会いに行っても遅くないよ」できることなら、自分があの病床に横たわる男であればと願った。

残念ながら、先を越されてしまった。

そしてこのわずか1時間の間に、神城グループの社長が誘拐されたというニュースはすぐに広まった。

ニュースやSNSのトレンドには、神城グループが危機に瀕しているという情報で溢れていた。

神城グループがここまで来られたのは、かつての神城家の大爺様の威厳があったことと、神城連真の鉄の手腕があったからだ。

西平では、多くの人が彼を虎のように恐れ、誰が神城家の前で大きな息をつくことができようか、それはまさに夢物語だった。

時間は一分一秒と過ぎていき、神城家の大爺様も来ていたが、手術室のドアはまだ開かなかった。

天知る、中の人々は外の人々よりもさらに緊張していた。これは神城家の社長、西平の最高峰の人物であり、一度咳をするだけでも変化が生じるほどの存在だ。

今、彼の生死は彼らの手に委ねられていた。

「ピッ!」

病室のドアが開き、明るい光が差し込んできた。医師が急いで出てきて、傍らの神城家の大爺様に軽く頭を下げた。「幸い神城社長は運が良く、あの一刀は急所に刺さりませんでした」

霧島咲姫はきつく握りしめていた手をようやくゆっくりと緩めた。

ようやく、ようやく大丈夫になった。