あなたは絶対に何も起こってはいけない。
霧島咲姫は救急室の外に立ち、目には涙を浮かべながら、中の様子をじっと見つめ、心の中は後悔でいっぱいだった。
「咲姫、彼は大丈夫だよ」朝霧翔真は眉をひそめ、心配そうな目で言った。
なぜ、また彼なのか。
しかし霧島咲姫は振り返り、黙って首を振った。
——すべて私のせいで、彼が怪我をした。翔真、あなたには分からない、彼は私を救うためにこうなったのよ。
そう思うと、霧島咲姫は眉をひそめ、歯を食いしばりながら手振りで伝えた。自分の体にもかなりの擦り傷があったが、彼女はそんな小さな問題をすでに完全に無視していた。
朝霧翔真は心を痛め、彼女を近くの救急処置室に連れて行って傷の手当てをした。
「手術はまだ1時間以上かかる。ここで傷を処置してから彼に会いに行っても遅くないよ」できることなら、自分があの病床に横たわる男であればと願った。
残念ながら、先を越されてしまった。
そしてこのわずか1時間の間に、神城グループの社長が誘拐されたというニュースはすぐに広まった。
ニュースやSNSのトレンドには、神城グループが危機に瀕しているという情報で溢れていた。
神城グループがここまで来られたのは、かつての神城家の大爺様の威厳があったことと、神城連真の鉄の手腕があったからだ。
西平では、多くの人が彼を虎のように恐れ、誰が神城家の前で大きな息をつくことができようか、それはまさに夢物語だった。
時間は一分一秒と過ぎていき、神城家の大爺様も来ていたが、手術室のドアはまだ開かなかった。
天知る、中の人々は外の人々よりもさらに緊張していた。これは神城家の社長、西平の最高峰の人物であり、一度咳をするだけでも変化が生じるほどの存在だ。
今、彼の生死は彼らの手に委ねられていた。
「ピッ!」
病室のドアが開き、明るい光が差し込んできた。医師が急いで出てきて、傍らの神城家の大爺様に軽く頭を下げた。「幸い神城社長は運が良く、あの一刀は急所に刺さりませんでした」
霧島咲姫はきつく握りしめていた手をようやくゆっくりと緩めた。
ようやく、ようやく大丈夫になった。