第163章 誕生日

霧島咲姫は席に座り、すぐに誕生日の歌が響き始めた。神城連真は彼女に目を閉じるよう促し、パッという音とともに、周囲の環境が突然暗くなった。

一人の女性がカートを押してゆっくりと近づいてきた。ケーキは精巧で小さく、先ほどのものよりも一回り小さかった。

霧島咲姫は笑みを浮かべ続けた。

「目を開けて」神城連真はようやくゆっくりと言い、彼女に目を開けるよう促した。

目の前には星の光が輝いていた。このとき霧島咲姫は気づいた。プールの周りには蛍がいたのだ。先ほどは明かりが明るすぎて気づかなかったが、今になって見えた。

大小さまざまな蛍が数え切れないほど目の前を取り囲んでいて、とても美しかった。

彼女は目の前でろうそくを置いている男性を見つめ、ついに涙を抑えきれず目から零れ落ちた。彼女は歯を食いしばり、つま先立ちになって彼の頬に軽くキスをした。

「おっ!キスだ!キスだ!」

神城連真は彼女の行動に驚いたようで、目を見開いて彼女を見つめた。霧島咲姫は唇を軽く開き、無言で三つの言葉を口にした。

愛してる。

神城連真は爆弾に火がついたかのように、心臓がドキドキと鳴り、彼女を抱きしめると、キスを始めた。

雰囲気はさらに熱くなった。

みんなはレストランに長く滞在し、最後に帰った。

帰るときには夜も更けていた。霧島咲姫の目には笑みが浮かび、隣に座る大小の男性を見て、心から喜んでいた。

しかし、こんな遅い時間なのに、神城淵司がまだリビングで彼女を待っていた。

三人の笑顔を見て、彼は顔を引き締めて言った。「霧島咲姫」

霧島咲姫は体が硬直し、眉をしかめたが、それでも笑顔を浮かべた。「お父さん、どうしたの?」神城連真の前回の一件以来、彼女は呼び方を変えていた。

「どうしたって?よくそんなことが聞けるな。自分のやったことを見てみろ」彼は目の前のものを彼女に投げつけ、怒りに満ちた表情を浮かべた。

実は彼はこの面倒事に関わりたくなかった。あの松本明奈は本当に人をバカにしすぎだ。手伝わなければ暴露すると言ってきたほどだ。

神城家は西平で、ちょっとした風評でも多くの人が笑い話にしようと待ち構えている。

高い位置にいるほど、落ちたときの痛みは大きい。それがこの道理だ。

神城連真は紙を手に取り、眉をひそめた。霧島咲姫は不味いと思い、急いで取って見た。