第167章 主権を宣言する

一条執事は自分の主人が東條未煙を若旦那の会社に行かせたことを知り、心の中で霧島咲姫に同情し、すぐに神城家の大爺様に報告した。

「大爺様、大変なことになりました。」

「何事だ、そんなに慌てて、お前らしくないな。」

一条執事は神城家で数十年も仕えており、使用人の中でも一定の地位を持ち、神城家の大爺様とも最も親しく付き合っていた。彼は荒い息を二つ吐いて、静かに言った。「大爺様、先ほど旦那様が、あの東條さんを若旦那の会社に入れるとおっしゃっていました。」

「何だと？とんでもない！」

神城家の大爺様はちょうど椅子に横になって休んでいたところだったが、この言葉を聞いて怒りで即座に起き上がり、顔に怒りの色が増した。

「わしの息子は何を考えているんだ。あの東條未煙は明らかにうちの連真に気があるし、腹黒い女だ。わしの孫嫁を陥れようとしている。今どうしてそんな悪辣な女を連真の会社に行かせることができようか！」

「そうですとも、大爺様のおっしゃる通りです。しかし今や旦那様はすでに決めてしまい、あの東條さんを行かせてしまいました。我々は今すぐ止めなければなりません。」一条執事も少し焦っていた。

神城大爺様はその後すぐに神城家に駆けつけた。

霧島咲姫と神城連真の間の恨みも彼は見ていた。自分の孫が彼女を好きなことも分かっていた。長年、彼が見守ってきた子供たちだ。しかし旦那が余計な縁結びをして、二人が別れることになったら、どうすればいいのか？

それに神城家の大爺様は霧島咲姫のことをとても気に入っていた。

深く息を吸い込み、神城家の大爺様は自分の呼吸がようやく楽になったと感じ、ため息をついた後、一条執事に言った。「咲姫はどうしている？」

「咲姫様と若坊ちゃまは庭園で遊んでおられます。あの東條さんが来たことは、咲姫様はまだご存知ありません。」

「うむ、彼女をここに呼んでくれ、それから神城淵司も一緒に来るように。」一瞬、神城家の大爺様は自分がずっと老けたように感じた。

自分の息子が孫と孫嫁の間の良縁を邪魔するなんて、これを人に言ったら笑い者にならないか？

神城淵司は手元に処理すべき事があったため、霧島咲姫が先に大爺様の部屋に着いた。彼女はそっとドアを開け、少し顔を覗かせて尋ねた。「お爺様、私をお呼びになりましたか？」