病院で、救急室のドアが開いたり閉まったりを繰り返していた。
真っ赤な「救急中」の文字はずっと消えることがなかった。
朝霧翔真は怒りと焦りで、神城連真に説明を求めようとしていた。彼と霧島咲姫の仲がどれほど悪くても、感情を全く無視して、自分の女が好き勝手に振る舞い、人が死ぬまでやりたい放題させるわけにはいかない!
東條未煙は自分の部屋に隠れ、派遣した人からの連絡を待っていた。しかし数時間経っても、相手から電話一本もなく、彼女の心に不安が芽生えていた。
携帯を握りしめて少し躊躇した後、結局彼女は外出することにした。自分で病院に行って、事態がどうなっているのか確かめる必要があった。あの連中は、成功したかどうかにかかわらず、せめて連絡くらいよこすべきだ。
自分の行方が簡単に発見されるのを防ぐため、何か異変に気づかれないよう、東條未煙は非常に慎重だった。彼女は自分の車を使わず、自宅から少し離れたところでタクシーを拾い、病院の近くで降りることもしなかった。ただ病院から遠くない商業施設の前で停車させ、ショッピングに行くふりをして車を降りた。
運転手が去るとすぐに、東條未煙は病院へと急いだ。ちょうど霧島咲姫が救急室に運び込まれる場面に遭遇し、彼女は喜びに震えた。どうやらあの連中はうまくやったようだ。今は霧島咲姫の死の知らせが出るのを待つだけだ。
東條未煙はその場面を想像するだけで、思わず歓声を上げそうになった。しかしここが病院であることを思い出し、その衝動を抑えた。彼女はもう病院を離れず、マスクをして少し離れたところで待つことにした。医師が出てきて霧島咲姫の死亡を宣告するのを待っていた。
そのとき、朝霧翔真が突然立ち上がって外に向かうのが見えた。東條未煙は少し不思議に思った。この朝霧翔真は霧島咲姫のペットのような存在なのに、こんな時に彼女のそばを離れるなんて、一体何をしようとしているのだろう?
なぜか不吉な予感がした。東條未煙は自分の直感を疑ったことがなかった。今は霧島咲姫の死の知らせを待つ余裕はなく、襟を高く上げて朝霧翔真の後を遠くからつけて病院を出た。
朝霧翔真が自分の車で去っていくのを見て、東條未煙は急いで車を止め、「あの車を追って」と言った。
運転手は「はい」と返事をし、好奇心から尋ねた。「お嬢さん、浮気調査でもしてるんですか?」