これは家から最も近い孤児院だった。霧島咲姫は車の中に座り、再びタバコを一本取り出した。道路の脇でさえ、中から子供たちの声が聞こえてくる。
M国にいた頃から孤児院を訪れる習慣があったが、帰国してからこれほど長い間、初めての訪問だった。
タバコの煙が彼女の全身を包み込む中、電話が鳴った。
「咲姫」
「翔真?」リサは眉をしかめた。彼には既に伝えてあったはずなのに、なぜ今頃電話をかけてくるのだろう。
朝霧翔真は微笑んで言った。「今夜時間があるかと思って。母が君に会いたがっているんだ」
帰国してからずっと、翔真はまだ朝霧家に行っていなかった。五年前、彼らは霧島咲姫が朝霧家にいることを認めなかったため、翔真は家を出て、それ以来母親とはほとんど連絡を取っていなかった。
リサは考えるまでもなく「すぐに行くわ」と答えた。
彼女の素早い返事に翔真の心は軽くなり、うっとりとした笑みを浮かべた。「どこにいるの?迎えに行くよ、まだ時間は早いし」
実は帰国した時から、翔真の母親はリサを認め、食事に招待したいと思っていた。しかし当時、翔真は彼女の気を散らかせたくなかったため、それを伝えなかった。
しかし今、彼女と神城連真を見て、翔真はまた心が揺れ動いた。
二人が朝霧家に到着したのは1時間後のことだった。テーブルには精巧な料理が並び、翔真だけでなく、十代の妹も同席していた。
リサは適切な服装で、前もって香水をつけ、タバコの匂いを巧みに隠していた。
上座の朝霧お父さんと朝霧母に向かって微笑んだ。
「おじさん、おばさん、こんばんは。本当に申し訳ありません、こんなに長い間お会いできずに」
立派に成長し、才能を示すリサは朝霧母のお気に入りだった。彼女は満足げな目で、ソファに座っている小さな娘の手を引き、自分のエプロンを解いた。
「リサ、さあ、こちらへ座って。今回西平に来たからには、もう帰るつもりはないでしょう?」皆がそこに座り、残りの使用人たちが次々と料理を運んできた。よく見ると、20種類ほどの料理があった。
リサはすぐに、これが朝霧母が長い間準備してきたものだと分かった。
しかし翔真がなぜ今になって自分に知らせたのか。そう思うと、彼を厳しく睨みつけてから、振り向いて笑顔で言った。