これは家から最も近い孤児院だった。霧島咲姫は車の中に座り、再びタバコを一本取り出した。道路の脇でさえ、中から子供たちの声が聞こえてくる。
M国にいた頃から孤児院を訪れる習慣があったが、帰国してからこれほど長い間、初めての訪問だった。
タバコの煙が彼女の全身を包み込む中、電話が鳴った。
「咲姫」
「翔真?」リサは眉をしかめた。彼には既に伝えてあったはずなのに、なぜ今頃電話をかけてくるのだろう。
朝霧翔真は微笑んで言った。「今夜時間があるかと思って。母が君に会いたがっているんだ」
帰国してからずっと、翔真はまだ朝霧家に行っていなかった。五年前、彼らは霧島咲姫が朝霧家にいることを認めなかったため、翔真は家を出て、それ以来母親とはほとんど連絡を取っていなかった。
リサは考えるまでもなく「すぐに行くわ」と答えた。