「仕事が終わったら迎えに行くよ。煌が親子レストランで一緒に食事したいって言ってるんだ」
霧島咲姫は携帯を手に取り、メッセージを見つめながら、複雑な思いで迷った末に、無意識のうちに行くことを選んだ。
煌が望むものは何でも、彼女は全力で叶えようとする。
ましてや煌の世話をするだけなら尚更だ。
退社時間になると、彼女はきちんと身なりを整えていた。
「ママ」
煌は興栄グループの建物の脇に立っていた。退社する人々が行き交っていたが、ほとんどは正面玄関から出て、別の方向には向かわなかった。
彼の後ろにいるのは当然あの男だった。
ただし今回は神城連真は車から降りていなかった。
「煌!」彼女は小走りで近づき、一気に彼を抱きしめた。今や煌はもうすぐ7歳になり、彼女自身体があまり丈夫ではなかったので、この抱擁で彼女の力の大半を使い果たしてしまった。