第304章 待ち伏せ

霧島咲姫は急いで立ち上がり、バッグを手に取って朝霧翔真を見て言った。「私、用事があるから先に行くわ。」

朝霧翔真が返事をする前に、霧島咲姫の姿は見えなくなっていた。霧島咲姫は大股で追いかけ、神城連真も大股で歩いているのを見た。その様子から、怒っているようだった。

霧島咲姫はもちろん知っていた。神城連真はきっとまた何かを誤解したのだろう。そうでなければこんな態度にはならないはずだ。彼女は無意識に足を速めたが、神城連真の歩幅はかなり大きかった。

ついに我慢できなくなった彼女は大声で叫んだ。「神城連真、止まって!私の話を聞いて!」

彼女は大声で叫んだが、神城連真はまだ足を止めなかった。目で見たことは事実だ。彼は考えれば考えるほど腹が立った。二人がまた会っていたなんて思いもよらなかった。そう思うと、彼の心は少し怒りで燃えた。

霧島咲姫は状況がおかしいと思い、再び大声で叫んだ。ようやく、何度も叫んだ後、神城連真はゆっくりと足を止めた。

こうして彼女は神城連真に追いつき、この一件の経緯を説明し、自分と朝霧翔真には何の関係もないことを何度も強調した。霧島咲姫のその目を見て、神城連真は彼女が嘘をついていないことを自然と理解した。

「なぜこのことを私に言わなかったんだ?前にも言ったはずだ、朝霧翔真に会うときは必ず私に言うようにと。でも今日は言わなかった。私が朝霧翔真をどれだけ嫌っているか知っているだろう。」

神城連真は躊躇なく、自分の心の内を霧島咲姫に伝えた。霧島咲姫ももちろん知っていた。それは単に海外での出来事が原因だった。以前、二人の間には何もなかったのだ。

霧島咲姫は一瞬どう説明すればいいのか分からなくなった。神城連真の心配そうな目を見て、彼女の心に少し罪悪感が生まれた。確かに、今回は自分が間違っていた。

彼女はもごもごと言った。「私...私はその時、あなたが怒るのが怖かったの。それに朝霧翔真が私を呼んだのは彼の彼女のふりをするためで、あなたが知ったら絶対に行かせてくれないと思ったから...ごめんなさい...」

言い終わると、彼女は神城連真の手を取り、ずっと優しくさすり続けた。それだけでなく、とても申し訳なさそうな表情をしていた。神城連真は彼女のこの様子を見て、自然と怒りが収まっていった。