朝霧母はこの時すでにソファーの上のウェディングドレスを手に取り、丁寧に触れながら、目に溜まった涙をついに抑えきれず、流れ落ちた。
霧島咲姫は胸が締め付けられる思いで、朝霧母の隣に座り、「おばさま、どうされたんですか?」と尋ねた。
朝霧母はようやく事の次第を語り始めた。
「咲姫ちゃん、いい子だね、うちの息子にはそんな福分がなくて、あなたに釣り合わないのよ!」
霧島咲姫は何を言っているのか分からず、おばさまは一体何を話しているのだろうと思った。
朝霧母は続けて言った、「私は自分の息子が一体何をしたのか、神城家のあの人をあんなに怒らせるようなことを、知らないのよ。朝霧翔真というこの出来の悪い子は、朝霧氏全体を賭けて人と勝負しているなんて、彼は小さい頃から優しすぎて、どうして相手の敵になれるでしょう。今や朝霧氏全体が風雨の中で揺れているわ、あなたたちがこの結婚を終わらせることだけが、朝霧氏を守る唯一の方法なのよ!」